scrap paper – history

ベトナム2017
天皇陛下のお言葉 全文
平成29年3月1日(水)
ベトナム国家主席夫妻主催晩餐会における天皇陛下のご答辞(国家主席府)

この度、クアン国家主席閣下の御招待により、皇后と共に貴国を初めて訪問することを誠に喜ばしく思っております。今夕は、私どものために晩餐会を催してくださり、また、国家主席閣下から丁重な歓迎の言葉を頂き、心から感謝いたします。
 
また、この機会に、私どもの子供である皇太子や秋篠宮夫妻が、かつてこの地を訪れました時に、貴国の皆様から受けた様々なお心遣いに対しても深くお礼を申し上げます。
 
近年、国家主席を始め貴国の指導者が我が国を御訪問になり、その際私どもに貴国訪問の御招待を頂いてまいりました。そうした中で、今回、貴国を訪れることができたことを感慨深く思っております。

貴国と我が国の間では、昔から数々の交流が積み重ねられてまいりました。歴史をたどると8世紀には、当時我が国の都であった奈良で大仏開眼の儀式が行われましたが、その際、現在のベトナム中部にあった林邑の僧侶・仏哲により舞が奉納されたと伝えられています。その時の林邑の音楽は、我が国の雅楽の楽曲として現在でも演奏されています。今回、かつて林邑が栄え、また、ベトナムの阮朝の都であったフエを訪問します。その地で我が国の雅楽と源を分かち合うニャーニャックを聞くことを楽しみにしております。

また、16世紀から17世紀にかけては、国際貿易港として栄えたベトナム中部に位置するホイアンに、我が国から多くの交易船が訪れ、日本人町もつくられました。

その後、我が国の鎖国政策により、貴国と我が国の交流は途絶えましたが、20世紀初頭には、「東遊運動」の下、約200名の貴国の青年たちが我が国に留学していたこともありました。

1973年に日越両国の外交関係が樹立されてから既に40余年、その間、両国の交流はますます拡大し、現在我が国には、約18万人のベトナム人が留学生、技能実習生などとして滞在しています。その中には将来、我が国で看護師、介護福祉士として活躍することを目指して、病院や福祉施設で働きながら研修をしている約500名の人たちもあります。明日、文廟において日本に留学していた人たちを始め、日越両国の交流に携わる人たちとの会合の機会を持つこととなっており、楽しみにしております。

近年、貴国では日本語を教える小学校もできるなど、日本語学習への関心が高まっていると聞いています。一方、我が国でも多くの企業がこの地での生産などに関心を高めており、ベトナムに居住する日本人の数も今や約1万5千人に上っています。日越両国において、それぞれの文化を紹介する催しも各地で開催され、お互いの音楽や食事などを多くの人々が楽しんでいることを大変うれしく思っております。

両国民の交流がますます深まり、お互いの文化への親しみが増してきている今日、この度の私どもの訪問が、両国国民の相互理解と友好の絆を更に強める一助となることを心から願っています。

ここに杯を挙げ、クアン国家主席閣下並びに令夫人の御健勝と貴国の国民の幸せを祈ります。